高木優一:
老人福祉施設からセミナーや相談会など、たびたび依頼されるとお聞きしました。
添田樹一:
私どもが施設にお伺いして、遺言や相続に関してお話をさせていただく機会も増えてきています。
高木優一:
先生のように、頻繁に老人施設に出入りされると、その施設の裏側といいますか、実体などもよく見えてくるのではないですか。広告や説明会では綺麗でハッピーな生活環境ばかりが強調されますが、実体は果たしてどうなのでしょう。
添田樹一:
私が後見人となっている入居者の様子はやはり気になりますので2~3か月に一度ぐらいの頻度で訪問するのですが、そのようなとき、たとえば残飯などが大量に捨ててあるのを見れば、この施設の食事は美味しくないのではないかとか、職員の入居者への対応を見て、いまいち熱意がこもっていないのではないか、とか。そういった表側からは見えない部分が見えてしまうということはありますね。
高木優一:
社会福祉法人系の老人施設でも、民間の施設でも、サービスの質は変わりませんか。
概してどちらが優れているかということはありますか?
添田樹一:
社会福祉法人だから、民間企業だから、といった差異はありません。経営者や従業員の姿勢や熱意などによって差が出るのだと思います。何か困った事態が発生したときの対応に真摯な姿勢が見られないとか、家族への連絡が遅いとか、従業員の口のきき方がぞんざいだとか、そういったところである程度良い悪いの判断はできるのではないでしょうか。
高木優一:
さかんにテレビやチラシなどで宣伝している施設は、要は入居率が悪いから宣伝しているという見方もできますよね。全室埋まっていて、入居者や家族から信頼されている施設は別に宣伝しなくても経営には困りません。
高木優一:
弁護士が老人ホームを斡旋するわけにはいきませんが、添田先生のように施設に出入りされる頻度の高い弁護士から、あそこの施設は従業員の教育がきちんとされていますよという情報をもらう方が、広告などよりもよほど信頼できますね。
添田樹一:
おっしゃるように私たち弁護士が施設の斡旋までは行いません。でも、介護施設や老人施設を紹介するビジネスに携わっている人は意外と多く、そういう方たちとは日ごろから情報交換などをしています。
高木優一:
なるほど。仲介ビジネスが成立する世界なんですね。
高木優一:
そのような仲介人の方は、入居希望者と施設のどちらから手数料を得るのですか?
添田樹一:
入居者希望者側ではなく施設との契約となります。入居希望者を紹介して、契約が成立すればフィーが発生するということになります。しかし、はっきり言って、紹介ビジネスに携わる人にも善し悪しがあるというのが現実です。私は、本当に入居者側の立場に立ち親身になって、適正な施設を紹介してくれる頼りになる人とお付き合いをするようにしています。