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SPECIAL対談 上東丙唆祥×高木優一
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物が捨てられない悲劇

高木優一:
遺品整理といっても、実際はどういうことをするのか、知らない方も多いと思いますので、具体的な仕事の内容を紹介していただけますか。
上東丙唆祥:
身内が亡くなった場合、人はいなくなってもその人が所有していた物はずっと家・部屋に存在し続けるわけです。単純に言えば、遺品整理とは、遺族に代わってその物たちを吟味し区分けし、片付け、遺品となる物を見つけ引き渡すという一連の作業となります。捨てるだけならばゴミ回収業者に頼めば済むことですが、値打ちのある物を私たちが見定めて「これはこのような価値がありますよ」とアドバイスをすることまでを行います。でも、アドバイスと言ってもそこまでですね。「こうした方がいいですよ」というような強制はしません。基本的には、相手が気持ちを整理し、どうするのかを判断するまで何も言わず待つというスタンスです。
高木優一:
これを処分してくれと言われても困る、という場面もあるのではないですか。私の場合、以前、「仏壇もいらないので一緒に持って行ってください」って軽く言われたことがあって、思わず絶句してしまいました。
上東丙唆祥:
私の場合、たいがいの物は受け入れるようにしています。ゴミ屋敷の整理も多く経験していますよ。皆さん、テレビなどのメディアでゴミ屋敷の実態を目にすると思うのですけれど、実は本当にゴミ屋敷なのか、物が溢れている物やしきなのか、単に乱雑でだらしない部屋なのか、一緒くたにされているような気がします。お年寄りの場合は、ゴミ屋敷ではなく、物やしきのケースが多いですね。捨てられなくて物が溜まりに溜まってしまっているんです。
高木優一:
チラシ一枚捨てられないんですね。通販で買った商品の段ボールが山積みになっていて圧倒されたケースもあります。すべて中身が入っているんですよ。買ったのに使わない。使いもしない物を広告で急かされてつい買ってしまう。挙句の果てに破産。悲劇以外のなにものでもない。
上東丙唆祥:
そのような物やしきの悲惨な例はいくらでも目にします。一方でゴミ屋敷というのは、生活の乱れがベースになっています。ラーメンのどんぶりが食べたままになっていたり、弁当の食べ散らかしがそこらへんに置かれたままだとか。
高木優一:
なるほど。生活習慣の乱れが次第にゴミ屋敷化していくんですね。私も任意売却の事例でよく目にしますよ。猫の排泄物を処理しないで、その匂いが壁中に浸みこんでいるとか、シャンプーの詰め替え用のパックを買えずに、ポンプ型のシャンプーのボトルが所狭しと並んでいるとか。もう疲弊した生活のありさまを、まざまざと見せられるときがあります。生活のすべての面において無気力になってしまっているのですね。

photo by naokichi hasebe

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