電話相談
> >
SPECIAL対談 牧壮×高木優一
1  2  3

技術の習得より、「何がしたいか」が重要

高木優一:
そう言う牧さん自身が、思う存分楽しんでいらっしゃいますね(笑)。
牧壮:
私は、シニアの人たちに難しい技術を伝授しようとは思っていないんですよ。要はシニアライフの楽しみ方の一つとして覚えていただこうということなんです。個人個人、それぞれに生活パターンが違いますから、それに見合った機種の選び方だとかSNSへの接し方などをお教えしています。海外に住んでいる孫の顔を画面で見ながら話ができるんですから。しかも無料で。こんな便利な物を活用しないのはもったいないですよ。
高木優一:
孫の方も、今日もおじいちゃん元気だって確認できますしね。
牧壮:
孫とテレビ電話をした画像を残して、お茶会などで周囲のシニア達に見せれば、「へえ、すごいな」とみんなが感動してくれて、そこでわくわく感が生まれます。
高木優一:
たしかに、そうですね。盛り上がりますよね。
牧壮:
以前は、パソコンなどを導入すると、まずは「こうしろ、ああしろ」と使い方、つまり技術の面から入るのが普通でしたけれど、今は違います。楽しむために「何をしたいか」から入りますから、シニアにとっても全然抵抗感が少なくなります。
高木優一:
たとえば、シニアの方たちから若い人へ浴衣の着方を、YouTubeにアップして世代間交流を図るなどもできますね。
牧壮:
まさにその通りですね。ネットによりさまざまな繋がりが期待できることは大変大きな意味があると思います。世代を超えたコミュニケーションが図れますし、文化の継承もできるようになります。これまでは、シニアがいろいろな経験を積み、それを財産として持っていても、後の世代に伝える術がなかったのですから。
高木優一:
昔は家族同士のコミュニケーションは十分に取れていたし、ご近所づきあいも活発でしたからシニア世代が孤立するということはあまりありませんでした。でも今は、核家族化が進み、あらゆる交流が断たれてしまっています。
牧壮:
現在、われわれシニアが集まったときの最大の心配事として話し合われるのが、認知症についてです。あるとき、私どものグループに「私、認知症です」という方が入ってこられました。びっくりはしましたが、認知症といっても何から何まで、すべての機能が失われてしまっているわけではありません。その方は、残された機能を有効的に使う方法はないものかと思い立ち私どものグループに入られたのですが、そこでipad iPadを覚え、フェイスブックを覚え、どんどんと自分の世界を広げていきました。今は、大阪まで出かけて行ってそこで講演を行うまでになっています。
高木優一:
それはすごい。
牧壮:
そうやって社会復帰をされ、患者自身が病気に対する情報発信をするにまで至っています。これまでは病気については医者が医者の立場で情報提供をしてきた。でも、今はSNSを使って患者自らが情報発信することが簡単にできるようになりました。この例などは、あきらめていた自分の人生が蘇った、ITの活用によって今までにないライフスタイルを確立することができたという好例だと思います。

photo by naokichi hasebe

1  2  3