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SPECIAL対談 友松篤信×高木優一
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イスラム教徒はアラブ諸国より東南アジアの方が多い

高木優一:
先生はイスラム文化の研究がご専門というわけではないですよね。
友松篤信:
違います。留学生との付き合いや活動の中でムスリムに関心を持ったということです。私の専門は国際開発・国際協力といった分野です。途上国の農業開発、教育開発などですね。
高木優一:
ハラールの普及活動は、主に日本人に対してということですか。
友松篤信:
そうです。対象は日本人です。日本人相手にイスラム教徒への対応のやり方をコンサルティングしているのですが、私が指導するというより、イスラム教徒の学生(留学生)に協力してもらって、彼らに実際的な指導や情報提供をしてもらっています。私は両者の間を取り持つという役割です。たとえばホテルとか美容院などがイスラム教徒の方をお客さんとして受け入れる際にどのような点に注意したらよいのか、というようなことですね。
高木優一:
なるほど。
友松篤信:
あとは、イスラム教徒に出すお弁当、ハラール弁当ですね。それを作る際の注意点をお弁当屋さんに教えたりとか。日本にやって来る観光客、ビジネスマンをどのように受け入れるかをホテルやレストランに指導しています。永年日本に住んでいるイスラム教徒は、ある程度日本の風習を理解しているので我々に合わせてくれており、それほどの混乱は起きません。
高木優一:
イスラム文化圏といっても広範囲にわたりますが、どのあたりの地域からの観光客やビジネスマンが多いのですか。
友松篤信:
圧倒的に東南アジアと南アジアですね。インドネシア、パキスタン、インド、バングラデシュなどはイスラム教徒が特に多い地域です。マレーシアも6割ぐらいがイスラム教徒です。
高木優一:
アジアですか。少し意外な感じがしますね。
友松篤信:
アラブ圏の国々がイスラム教徒の数が多いイメージがありますが、実際には東南アジア・南アジアの方が多いんです。インドネシアは世界最大のイスラム教徒の国ですね。ムスリム人口が2億人ですから。インドネシアから日本へ来るビジネスマンや観光客は毎年30%ずつ増えています。
高木優一:
イスラムの文化やハラールって、日本人がまったく不慣れというか、理解しづらい世界ですね。私はイスラムと聞くと、まずは過激派のテロ活動を思い浮かべてしまいます。
友松篤信:
理解しづらいでしょうね。イスラムの戒律のことをイスラム法と言うのですが、イスラム法には色々な解釈があります。その中で特に保守的な解釈、彼らの経典であるコーランに書かれてあることを一字一句すべて正しいとする原理主義の流れが歴史的にあり、特にサウジアラビアやイエメンのムスリムにはその傾向があります。そうした土壌の中から生まれたものが過激派と呼ばれる人たちなんですね。もちろんムスリムのごく一部で、大多数のムスリムは反対しています。
高木優一:
なるほど。どんな状況であろうとお祈りを最優先させるということなども、日本人には理解しづらいことの一つですね。
友松篤信:
お祈り、すなわち神と人との関係を人と人との関係より重視するという考え方は、なかなか日本人には理解できないことだと思います。

photo by naokichi hasebe

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