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SPECIAL対談 石塚毅×高木優一
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人材紹介業がいずれジリ貧になると先読み

石塚毅:
8年半会社を維持し、人材紹介を軸に事業を展開してきたわけですが、その中でゆうに10以上の新しい商品サービスを考えました。たとえば、税理士エージェントという商標を今でも所有しているのですが、税理士事務所専門の人材紹介業を試みたこともあります。また、採用のリスクコンサルティング事業とか、人材紹介事業の「隣地」でいろいろな可能性を追求したんです。まあ、結果としては野球で言えばホームランは1つも出なかったのですが1つ2つヒットが出たかなという程度でしたね。なぜ、いろいろな試みをしたかと言えば、人材紹介事業1本の会社って、人を増やしていくことができなければ何も差別化ができないのです。だから、手を変え品を変え、他との違いを出さなければならない。そのうち、だんだんと人に疲れてきてしまいまして(苦笑)、それで、紹介業ではなく、企業の採用顧問の数を増やしていきました。
とにかく、ご紹介人材の確保が思うようにできなくなってきたのです。社会的な背景として、20代の人数が減ったという現実もありますが、とにかく優秀な人ほど辞めなくなってきたのです。また、どこかの大手企業に勤めている優秀な人が辞めるという情報が入っても、転職するのではなくいきなり起業してしまうんですね。人材紹介の場合、大学の偏差値に喩えると55ぐらいの人が一ご紹介しやすいのですけれども、その偏差値レベルの人材がなかなか探せなくなった。2年前ぐらい前からフィットする人材の確保が非常に困難になってきたんです。
高木優一:
なるほど。人材が以前ほど動かなくなったと。
石塚毅:
自分の活動量が足りないのかなと思い精力的に動き回ったのですが、それでもなかなか確保することができない。まあ、絶対人数が不足している状況であることは間違いないのですが、それでも何故人を探すのがこんなに大変になったんだろうって頭をひねるしかありませんでした。次第に焦りを感じてきて、かつては、この人は紹介できなかったな、というレベルの人材でも紹介せざるをえないような状況になりました。半ば目をつぶって送り込むしかない。ああこれは先々ジリ貧になるよなぁって。
それに追い討ちをかけるように2017年の秋口に決定的な事態が起こりました。そしてトドメは2018年の2月の紹介人材の短期退社です。入社して数日で、いい歳したビジネスマンがすぐに辞めるというケースがなんと2件立て続けに起こったのです。こちらが紹介した企業に請求書を出す前に辞めてしまったんですよ。これは堪えました。
高木優一:
ああ、それはきついですね。
石塚毅:
それである時、ふいに思ったんです。これはもう潮時だろうって。人材紹介からいよいよ撤退すべき時が来たな、と。ずっと長い間携わってきた人材紹介業を辞めるというのは本当に勇気が要りますよ。数千万の売上を捨てることですから。
高木優一:
確かにそうですけれど、一旦腹をくくって辞めようと決心すると気持ちが楽になりませんか。
石塚毅:
おっしゃる通りですね。撤退は大きな決断なんですけれど、それを超えると楽になりましたね。それでもう一度ゼロから、これまでの成功体験をすべてリセットしてもう1度起業しようと決めて、今年の5月に「株式会社 求人」を新たに起ち上げました。

photo by naokichi hasebe

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