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妹が共同での売却に応じてくれません。

(神奈川県川崎市宮前区在住A様)
3年前に母が他界し、妹と2人で実家の土地建物を相続しました(持分2分の1ずつ)。

現在この実家には、私と娘家族で住んでいます。

私は、将来、誰にも迷惑をかけたくないので、老人ホームに入居することを考えていますが、現在手元にある現金では正直心許ない状況です。

そのため、この実家を妹と共同で売却して将来の施設入居資金にしたいと考えています。

しかし、そのことを妹に言ったところ、「大事な実家なんだから売るなんてとんでもない!」と言って、共同での売却に応じてくれません。

この場合、何かよい方法はないでしょうか。
添田 樹一弁護士の回答

(川崎つばさ法律事務所代表)

ご相談ありがとうございます。

不動産を含めた財産は、基本的に持ち主にしか自由に処分する権利がありません。

今回の件でも、実家の共有持分2分の1については、妹さんの財産ですから、原則として妹さんの承諾がない限り売却することはできません。

妹さんの共有持分が処分できないので、Aさんの持分だけ売却するという方法も考えられますが、不動産の共有持分だけを買ってくれるという人は滅多にいませんし、いたとしても売買代金は時価よりもかなり下がってしまいます。

したがって、第三者に自分の持分だけを売却するという方法は、あまりいい方法とはいえません。

一方で、妹さんにAさんの持分を買い取ってもらうというのは、一つの有力な方法だと思います。

妹さんは、「実家を残したい」と考えているのですから、妹さんが実家の土地建物の所有権を完全に取得して、今後は妹さんに実家に住んでもらう(管理してもらう)のはどうでしょう?

まだこのような提案を妹さんにしていないのであれば、一度提案してみるとよいかもしれません。

ただし、この方法も、結局、妹さんがAさんの持分を買い取ることに承諾してもらわなければ、実現できません。

妹さんには妹さんの事情(他に持ち家があってそちらに住んでいる、持分を買い取るお金がないなど)もありますので、難しいところです。

では、妹さんが実家の売却や買い取りに頑として首を縦に振らない場合、Aさんとしては諦めるしかないのでしょうか?

実は、一つだけ方法があります。

それが、共有物分割請求訴訟を提起するという方法です。

さきほど、財産は所有者に処分権があるという基本原則を説明しましたが、その例外にあたります。

共有物の分割について共有者間の協議が調わない場合には、その分割を裁判所に請求することができると定められており、この裁判を共有物分割訴訟といいます。

例えば、姉妹で共有名義の土地建物を相続(所有)している場合に、その土地を売却してその代金を分けるか、妹が姉の持分を買い取るかなどで意見の調整が付かないようなケースや、今回のようにそもそも妹が話し合い自体に応じないというケースがこれにあたります。

裁判による共有物の分割方法は、民法上、現物分割が原則とされています。

今回のAさんのケースだと、実家の土地と建物を、妹さんと半分ずつに分割するということです。

土地も建物も、現物を価値が等しくなるように真っ二つにするイメージですね。

ただ、この方法は、あまりいい方法とはいえません。

土地は平等に半分に割ることはできますが、建物を半分に切ってしまうのは、どう考えても現実的ではありません。

土地にしたって、半分にすれば狭くなってしまうので、価値が下がったり、売りにくくなったりします。

このように、現物分割が物理的に不可能な場合や、分割によって著しく価値が下がる場合には、共有物を競売にかけ、その売得金を分割する方法が民法には規定されています。

競売にかけて、売れた金額を持分に従って分配するということですね。

このように、共有物分割請求訴訟では、妹さんの意思に関係なく、このような判決によって、不動産を処分することができるのです。

さらに、民法に規定のある上の2つの方法だけでなく、過去の判例では、一定の事情のもとで、共有物を共有者の一人または数人の所有とし、他の者には持分の価格を賠償させる方法による分割が認められています。

たとえば、今回のAさんのケースであれば、価額賠償の判決が出た場合、Aさんが妹さんの共有持分を裁判所の決めた金額で強制的に(妹さんの承諾なく)買い取ることができるということです。

判決により、Aさんは、妹さんの共有持分を買い取り、実家をAさんの単独所有にできたのですから、その後に実家をAさん単独で売却することができます。

以上のように、共有物分割請求訴訟という方法をとれば、妹さんの承諾が得られない場合でも、実家を現金化できることになります。

また、裁判を提起しても、必ず判決で終わるというわけではなく、裁判内で当事者同士が和解することも可能です。

Aさんのケースであれば、実家を競売にかけるよりは、売却した方が高く売れるという話になり、最終的に妹さんが共同で売却することに協力する旨の和解が成立する場合があります(私の経験上、判決よりもこういった形で和解決着することが多いです)。

加えて、「売却はしたいけど、裁判には抵抗がある」という場合には、共有物分割「調停」という方法も用意されています。

調停では、裁判所の調停委員という方が、専門的立場から共有物分割について話し合いがまとまるように調整をしてくれます。

Aさんの場合、妹さんと話し合いがつかない場合には、共有物分割調停か共有物分割請求訴訟の提起を検討してみてはいかがでしょうか。
不動産・相続お悩み相談室

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