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息子が首を吊りました

(神奈川県川崎市麻生区在住K様)
鬱気味だった息子が昨年末借家で自殺をしました。

親としては最近の異変に気付いてやることもできず、仕事で悩んでいたみたいです。

四十九日も終わり色々と慌ただしくそして悲しい日々を過ごしておりましたが、先日損害をこうむったとして大家さんに家賃1年分と、部屋の模様替えの工事費を請求されました。

勿論ご迷惑をお掛けしたのはこちらなので致し方ないと思っております。

家賃1年分は仕方ないとして、その中に内装などの工事費も含まれないのですか?

家賃1年分と工事費は別途という事は普通なのでしょうか?

教えて下さい。
孤独死
本間 正俊弁護士の回答

(多摩区役所前法律事務所代表)

息子さんを亡くされたとのこと,心中お察しいたします。

以下,法律上の扱いについての一般論をもとにご説明いたします。

大家さんとの間の賃貸借契約は借主である息子さんが亡くなられてもそれだけでは終了せず,借主の地位が相続人に承継されます。

とはいえ,今回は自殺されたとのことですので,大家さんから債務不履行による契約解除がなされ,解除による契約終了に伴って原状回復費用と損害賠償金を求められている場面であろうと思います。

建物賃貸借においては,貸主は使用収益させる義務を負い,反対に借主は賃料を支払う義務を負うほか,「善良なる管理者」の注意をもって使用する義務をも負います。

この善管注意義務の中に,建物内で自殺しない義務も含まれていると裁判所は解釈しています。

さらに,借主には契約終了時には原状回復をする義務があり,また与えた損害に対しては賠償する義務があります。

これは相続人としても引き継ぐ義務ですが,契約時に保証人になっておられれば保証人が負う義務でもあります。

相続人として引き継ぐ義務は,亡くなって3か月以内に相続放棄をしてしまえば,最初から相続人ではない扱いとなりますので,最終的に義務を負担することはありません。

しかし保証人としての義務であれば,相続とは無関係なので,そのまま残ってしまいます。

大家さんから請求されている「1年分の家賃」は損害賠償金,「模様替え費用」は原状回復費用と逸失利益の損害賠償金ということになると思われます。

大家さんからすれば,息子さんが自殺してしまったことで,当該建物は事故物件になってしまいます。

一般にそうした事故があった物件に進んで住みたい人はいませんので,しばらくは入居者がつかず,その後入居者があるにしても大幅な賃料減額は避けられないことになります。

これが逸失利益としての損害賠償金になります。

こうした心理的瑕疵については,貸す際に大家さんとしては黙っているわけには行かず,きちんと説明する義務があります。

説明すれば当然入居を拒否されるでしょうし,安ければなんとか入居してくれるかもしれません。

これを黙って貸してしまい後に発覚したりしたら,それこそ大家さんの方が損害賠償責任を負わされる可能性があります。

実際のところこのネット社会においては事故物件の情報も出回ってしまい,隠しとおすことは不可能です。

大家さんからすれば,入居者がつかない期間の家賃や,減額を余儀なくされた期間の減額分は,いずれも借主の債務不履行による損害ですから,これを請求するのは当然ということになります。

また,自殺の態様によっては,建物内が汚損されることもあり,大幅なリフォームが必要になり,これは原状回復の費用と損害賠償の両方の意味を持つことになります。

さらに,ただでさえ借り手がつかない事故物件なのですから,多少はきれいにして付加価値をつけないとなおのこと借り手がつきませんので,単なるリフォームを超えた工事が必要になってくることになります。

加えて,事案によってはそのアパート自体が事故物件とみられて,入居者を失ったり,家賃を減額しないと新しい借り手がつかなかったりといった影響が出ることも考えられます。

では,どのくらいの期間,借り手がつかず,また減額が必要になるのでしょうか。

下級審の裁判例では,その建物の立地や間取り等の具体的な事情によって変わってくるとしています。

例えば都会で駅前の単身者用のワンルームアパートであれば,それなりに借主がつきやすく,交代も頻繁でしょうから,比較的「事故物件」であることは忘れられて心理的影響は早く減少します。

こうした場合でも,入居者がつかない期間を1年間,さらに家賃を半額にしないといけない期間を賃貸借契約によくある契約期間としての2年間としているケースが複数みられます。

今回の建物がどのようなものかご質問からは分かりかねますが,一般論からしますと大家さんから請求されている「家賃1年分」と「模様替え費用」というのは,あながち過大な請求ではないのかもしれません。

大家さんの方でも困ってしまっている可能性もありますので,解決へ向けて専門家に一度具体的な事情も含めて相談されてみるとよろしいと思います。
不動産・相続お悩み相談室

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「炎上の背景から何が見えるか?」

[ゲスト] 真鍋厚(フリーライター)

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