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SPECIAL対談 伊勢田篤史×高木優一
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亡くなった本人しかアクセスできない、という問題

高木優一:
デジタル終活をしておかないとまずいことになる!という意味で、何か良い事例はありますか。
伊勢田篤史:
そうですね。よく言われるのは、FX取引ですね。FX取引をやっていた方の死亡後、大幅な為替変動が発生し、証券会社から、ご遺族に対して、追加証拠金として約100万円が請求された事例が有名ですね。また、最近のトレンドとしては仮想通貨(暗号通貨)ですね。仮に、亡くなった時に1億円分の評価額の仮想通貨を持っていたとすれば、1億円という財産価値に対して相続税が課せられる可能性があります。しかし、ご遺族の多くは、仮装通貨の秘密鍵等のパスワードを知らず、そもそもアクセスできない。なお、国税庁の見解では、たとえご遺族がパスワードを知らなくても相続税を課すという方向のようですから、家族としては、まさに青天の霹靂でしょうね。
高木優一:
怖い話ですね。しかし、仮想通貨にしろFXにしろ、家族には言わずに利用している場合が多いと思いますよ。
伊勢田篤史:
そうなんですよ。今は、パソコンやスマホで全部やってしまいますから、家族に内緒でできてしまいます。他にも、本人から遺影にしてほしいと言われていた写真がパソコンやスマホの中にあっても、パスワードロックがかかっているから取り出せない。また、亡くなった後に友人などに連絡しようとも、住所録も全部パソコンやスマホに入っている、などというケースも多く見られます。
高木優一:
先生は、どのような対策を提唱されているんですか。
伊勢田篤史:
まずは、最低限、パソコンやスマホのログインパスワードをエンディングノート等の紙に書いて残しましょうとお伝えしています。次に、インターネット証券や仮想通貨等の財産に関するものについては、その存在とともに金融機関名や秘密鍵等のパスワードを、同様に紙に書いて残しましょうとアドバイスしています。パソコンやスマホのログインパスワードが分かれば、遺族が調査することも可能なのですが、遺族の負担を減らすためにも、できる限りの情報をしっかりと紙で残しましょうと案内しています。
高木優一:
結局は、アナログに戻るということなのですね。
伊勢田篤史:
そうなんですよ。ワードとかエクセルとかで自分が亡くなった後のことを記している人もいますが、結局パスワードロックを掛けたパソコンやスマホの中に入っていて、遺族が適時にアクセスできないので注意が必要です。
高木優一:
それはそうだ(笑)。
伊勢田篤史:
それではUSBならいいだろうということになりますが、そうなると、家族にどのUSBに何を残したのかをちゃんと伝えているかということが重要になります。これが意外ときちんとされていません。遺品整理の業者の方に聞くと、結構USBなどは出てくるらしいのですが、それを家族に見せても、他のいらない物と一緒に処分してくれという話になります。
高木優一:
何も知らされていない遺族としては不要な物ということになりますよね。大事なものかどうかなんて考えないで棄ててしまうと思います。

photo by naokichi hasebe

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