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SPECIAL対談 豊田則幸×高木優一
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日系ブラジル人絡みの複雑な相続事案

高木優一:
人生の転機というのは面白いですね。先生は現在、以前の仕事の経験も活かしながら、相続でも海外、特にブラジルに関する国際業務が得意なのですね。
豊田則幸:
そうですね。たとえば、去年の案件の例を挙げますと、首都圏在住の相続人の方から東北地方にある実家の土地が、祖父名義のまま50年間相続登記ができないままでいる、との相談を受けました。その方のお父さんが生前、地元の司法書士に相続登記を依頼したところ、途中で断念されてしまい、そのままになっていたそうなのですが、今度は、そのお父さんも亡くなり、弟さんが実家を継ぐことになったので、「このまま放っておくわけにもいかない。」と、人づてに私に相談が来ました。何が問題だったのか、お会いして話を聞いたところ、亡くなったおじいさんには後妻さんがいて、おじいさんの後に亡くなったのですが、後妻さんの兄弟が両親とともにブラジルに移民していて、正確な相続関係が把握できない様子でした。調査の詳細は割愛しますが、最終的にはブラジル人25人、日本人14人の計39人の相続人がいることが判明しました。私は昔の仕事の関係でブラジルやポルトガル語には少々なじみがあり、また、日系ブラジル人の友達もいるため、ブラジル側の親戚と連絡し、協力を得て、少しずつ情報を集め、管轄法務局とも打ち合わせをしながら、何とか1年間で相続登記を終わらせることができました。
高木優一:
それは大変でしたね。なぜ、そんなにブラジルに相続人が多いのですか。
豊田則幸:
後妻さんのお父さんが日本とブラジルで計3回結婚し、後妻さんの兄弟姉妹だけで十数名いたからです。
高木優一:
日本の「明治の男」を髣髴させますね。逞しい。
豊田則幸:
本当ですね。但し、そればかりでなく、ブラジルで暮らす日系人はとても勤勉で優秀だと評価されています。例えば、日系ブラジル人は全人口のわずか1%にも満たないのですが、一時期、ブラジルの東大に相当するサンパウロ大学の学生のうちの約15%を日系人が占めたこともあったそうです。
高木優一:
日本人の勤勉なDNAが継承されているのですね。コーヒーなどの農園ビジネスでも日系人の方が成功されていますよね。
豊田則幸:
そうですね。また、現在抱えているブラジル人関係の相続案件も非常に複雑で、やはり相続人が日本人20数名、ブラジル人10数名なのですが、ブラジルの相続人の一人が認知症になってしまったため、後見制度を利用できないかと検討しているのですが、ブラジルの後見制度は日本と違って、かなりの費用と手間がかかるらしく、なかなか事が進まない。その間にもできることはやろうと、ブラジル側の相続人2名に、千葉家裁に相続放棄の申述申立をして頂くことにしました。手続きには時間を要しましたが、以前も同様の経験があったので、その時の経験を基に、無事、相続放棄が認められました。

photo by naokichi hasebe

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