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SPECIAL対談 今酒雄一×高木優一
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相談会での忘れられない出来事

高木優一:
相談会は定期的にやられているのですか。
今酒雄一:
やっています。ずっと1人で悩まれていている方が多いですね。たとえば、子供を産みたいけれど、どうしようとか。産院でも感染が心配なので隔離されてしまうのです。
高木優一:
それは辛いですね。
今酒雄一:
また、すべての医師がB型肝炎に詳しいかと言えば、必ずしもそうとは言えません。
どう見ても予防接種時の注射器の打ち回しで感染されたにもかかわらず、これは母子感染ですと医師に言われたと、相談会に来られた方が私に訴えてきたことがありました。
実際、血液検査の結果を見る限り、100%母子感染ではないことが判りました。
それをお伝えしたところ「それは良かった」と涙を流されていました。その方は、給付金のことなどどうでも良かったのです。
母子感染だと告知されたときに、ずっと世話になっていた母親を恨むことになってしまった。それから、母親とどう接していけば良いのかがわからずに悩み続けていたのでした。そして母親が亡くなり、私どもへ相談に来られたのです。
「母ちゃんは悪くなかったんだ」と泣きながら喜んでいた姿は今でも忘れられません。
高木優一:
母親がウイルスを持っている場合はほぼ100%感染してしまうのですね。
今酒雄一:
母体にHBe抗体ができていないときはそうですね。反対に、母体にHBe抗体ができている状態のときは、今回の制度上は、母子感染しないことが前提とされています。
つまり、B型肝炎になったのは、予防接種などの注射器の打ち回しであるということですから給付金請求の道が拓けてくるということになります。
高木優一:
自分がB型肝炎ウイルスを持っている母親は、子供を産むということに対してはかなりの覚悟がいるということになりますね。
今酒雄一:
以前はそうでした。しかし、昭和61年から母子感染防止事業が本格的にスタートし、妊娠して体内にB型肝炎ウイルスを持っていることが判った場合、出産したあとすぐに赤ちゃんにワクチンを打ってキャリア化するのを防ぐという取り組みが始まりました。
高木優一:
それはすばらしいですね。そのワクチンを打てば子供はキャリア化しないということですか。
今酒雄一:
そうなのですが、残念ながらごくまれにキャリア化してしまう場合も見られます。
高木優一:
今酒先生は本当に良く勉強をされて、お医者さんよりこの分野に関しては詳しいのではないかと思います。
今酒雄一:
そんなことはありません。ただ、医師の判断に納得がいかないときは、「先生、この血液検査の結果見るとこうじゃないですか」と僭越ながらお話をさせていただく場合もあります。いろいろな論文や書籍を当たっても解らない場合は、この領域を専門に研究されている先生に聞きにいくということもします。
高木優一:
今酒先生の勤勉さにはまったく頭が下がります。本日はどうもありがとうございました。

photo by naokichi hasebe

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