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SPECIAL対談 深川みきひろ×高木優一
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「私の家の隣に保育園を作っては困る」という訴え

高木優一:
ある意味、育児を放棄している人の分まで税金で賄わなければならないのですよね。
深川みきひろ:
そうなんです。仮にゼロ歳児を預けるとしますと、自治体によって差はありますが、1人につき月に約60万かかります。つまり、年間約720万の費用が必要になります。お母さんがパートで働いているとすれば、収入は月に20万円程度でしょう。そうなると、「それでは20万円渡しますから、お子さんは家庭で見てくださいね」というような意見も出てきてしまいます。
高木優一:
それは本末転倒な話ですね。
深川みきひろ:
待機児童ゼロというワンフレーズは確かに正しいかもしれません。本当に生活状況が厳しい家庭、たとえば両親が離婚してお母さんやお父さんが働かなくてはいけない家庭、というようなケースばかりであれば、待機児童はゼロにすべきです。しかしながら、働くのが嫌だ、子供を育てるのが面倒だという理由で保育園を頼るのはどうかと思います。子供を8時間預けたいという相談をされ、「お母さんはどのくらい働かれるのですか?」と質問をすると、「4時間ぐらいかなと思っています」という返事。「残りの時間はどうされるのですか。それだけの時間しか働かないのであれば収入面で厳しいのではないですか?」と重ねて聞くと、「いえ。収入は別に大丈夫なんです。4時間働くぐらいでいいんです。あとの時間を保育園で預かっていただければ、お出かけもできるし」というような答えが返ってきたこともありました。そういうような相談を持ちかけられた場合はお断りさせていただいております。
高木優一:
多そうですね、そういう相談。
深川みきひろ:
いや、さすがに今のような極端な例はあまりありませんけれど、基本的には私は保育園を増やしていくべきだし、園庭のない保育園を見れば心が痛みます。何とかしてあげたいと思いますよ。また一方で、待機児童をなくすために保育園を作ろうと計画を立てると、最近では、「子供の声がうるさいから、私の家の隣には保育園を作ってもらっては困る」というような反対運動が起きてきます。
高木優一:
保育園を作るのはいいけれど、私の家の隣に作るのはやめてくれというわけですね。
深川みきひろ:
たとえば小さな保育園が新しくでき、ある住民からうるさい、生活に支障をきたすなどの意見がありました。ところがその保育園の近くにいる高齢の方々へ「ご迷惑ですか」と尋ねると、全く逆の声が上がってくるのです。「毎日、子供たちの元気な姿を見たり、声を聞いたりするのが楽しみです」と。
高木優一:
高齢者にとっては、子供たちの声や遊ぶ姿が、平凡な生活の潤いになるということですよね。
深川みきひろ:
もちろん、そういった住民の声は真摯に聞き、子どもたちの声などで迷惑がかからないような配慮はできるだけするようにします。しかし、公園の隣に住んでいれば、やはり子供たちの声は響きますし、食べ物屋さんの隣であれば匂いもしますしね。生活をする上でのリスクをすべて取り払うことはできません。そこは納得していただきたいと思います。

photo by naokichi hasebe

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