電話相談
> >
SPECIAL対談 福原直樹×高木優一
1  2  3

お客さんを喜ばせたいと気持をどれだけ持てるか

高木優一:
最初から高級な鮨屋をやりたいという想いは強かったのですね。
福原直樹:
そうです。場所はご覧のように住宅街で人通りも少ないのですが、たとえば溝の口に開けば、「ちょっと軽く飲んで帰るか」という感覚で使われるだろうと思います。でも、ここだと急行も停まらない駅の住宅地ですから、わざわざ美味しい鮨を食べに行こうというお客さんしか来ないわけですね。
高木優一:
なるほど。溝の口だと雑多な客層が歩いていますから、サラリーマンが居酒屋と同じような感覚で利用するケースが当然多くなるでしょうね。急行が停まるターミナル駅が必ずしも良いってわけじゃないんだ。
福原直樹:
目的を持ったお客さんが来てくれる、私のやりたいことを受け入れてくれるお客さんがわざわざ出向いてくれるということです。お客さんは「あれをくれ、これをくれ」などとは一切言いません。全部お任せですね。
高木優一:
作り手である福原さんと受け手であるお客さんとの信頼関係があるからでしょうね。
福原直樹:
先日、いつも銀座や表参道の店を仕事絡みで利用しているお客さんがお見えになったのですが、「これいくらでしたっけ。大丈夫ですかね」と訊いてきました。都心の一流店を利用した経験から尋ねたのだと思うのですが、それ以上のネタが次々と出てくるのでちょっと心配になったのでしょうね。「いえ、ウチはこれでやっていますから」と答えたら、「いや、銀座で鮨食うのが馬鹿らしくなってきた」とほっとした顔をしていました。
高木優一:
将来、福原さんのような考え方の職人さんがどんどん現われて欲しいですね。街の価値が上がりますから。福原さんが鮨職人としてもっとも大切だと思うのはどんなことでしょうか。
福原直樹:
嘘をつかないことだろうと思います。自分にもお客さんにもです。この仕事が心底好きで誇りを持っていれば嘘はつけません。さらには、お客さんを喜ばせたいという気持ちをどれだけ持つかということですね。
高木優一:
まさに鮨職人の真骨頂ですね。今日はどうもありがとうございました。

photo by naokichi hasebe

1  2  3