電話相談
> >
SPECIAL対談 真鍋厚×高木優一
1  2  3

企業コミュニティの消滅

高木優一:
コミュニティの崩壊に関しては、メディアでも多く採りあげられていますし、いろいろな識者が言ったり書いたりしていますね。
真鍋厚:
そうですね。やはり現代の大きな問題だと思います。日本の場合、戦後に集団就職に象徴されるように、大都市への人口の大移動がありました。農村にいた人が都会に出てきていろいろなコミュニティを作り上げたわけです。主としては企業がそれを推進しました。「企業城下町」といった形で会社内コミュニティが潤っていたのですが、今の企業はそのような受け皿を有しなくなってきています。寮や社宅とかも減ってきていますし、企業内コミュニケーションがどんどん薄くなっていく方向に進んでいます。情報化がそれに拍車をかけました。チームによる共同作業が減り、パソコンによる個人プレーが主体となってきましたので、個人の業績のみで評価が決まってきています。企業が地方から出てきた人のコミュニティの土壌になっていたのが、今やほとんど機能しなくなってきているのです。会社の中でも、昔のコミュニティが有効だった頃のことを知っている古い社員が、若い人に「飲みに行こう」などと働きかけてもついてきませんしね。
高木優一:
なるほど。集団就職が日本のコミュニティ形成の根っこにあったんですね。
真鍋厚:
戦前には農村共同体というものがしっかり存在していました。戦後になって都市部への流入が非常に活発になってくると、地方は公共事業のお金に依存する形で共同性を保全し、都市に出てきた人たちは企業内にコミュニティを形成し、安心を得るという構図が作り上げられました。ただ、高度経済成長期にはそれで何の問題もなかったのですが、だんだんと経済が回らなくなって企業も余裕がなくなり、社員やその家族の面倒まで見られなくなる。共同体的なつながりがどんどん薄くなりやがてコミュニティは崩壊してしまうという図式になっていると考えられます。一方で地域コミュニティは企業のように熱心に創り上げられませんでした。戦後からこれまで、一部の地域を除き積極的な地域コミュニティを形成するという動きがまったく見られません。欧米のようなキリスト教がベースとなっている宗教コミュニティもないですしね。新興宗教のコミュニティだけは例外的に機能していますが……。ですから、企業勤めを終え定年後に地元に帰り生活をし始めても何も拠りどころがない。それが今、社会問題となっているわけです。

photo by naokichi hasebe

1  2  3