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SPECIAL対談 竹内公一×高木優一
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なぜ、在宅医療が推進されるのか

高木優一:
急性期の、身体を容易に動かすことのできない患者さんや、集中治療室にいるような患者さんしか入院する理由があまりないというわけですね。
竹内公一:
その一方で高齢者社会になってくると、老老介護の世界がクローズアップされてきますし、老人独居の世帯も増えていきます。だれもかれもを家で介護するというのは、ヘルパーの制度などが充実してくれば別ですけれど、現実的にはなかなかそういう風にはなりません。ですから、「家で看る」というのは、たとえば特養やグループホームなどの施設とかデイサービスなどの利用も含めるという事になります。
高木優一:
そうなってくると、施設での看取りも増えてきそうですね。
竹内公一:
そうですね。介護受け皿の充実は必須だと思うのですが、賃金の問題がやはり大きな壁になってくると思います。現実的に、介護現場で働く人たちは、もっと優遇された別の職場があればそちらに移ってしまいます。ですから、介護スタッフが安定して働けるような環境になれば、施設で看取られることにもネガティブなイメージはなくなると思うんです。
やはり、今のところは、施設で看取られるよりも病院で看取られた方が安定しているようなイメージがしますよね。
高木優一:
そうですね。施設で看取られるのは寂しいイメージがあります。
これから、看取りあるいはもう少し大きな括りとして、医療そのものはどのように変化していくのでしょうか。
竹内公一:
IT技術の変革により大きな変化を遂げると思います。平成の前半までは、血圧手帳の提出を患者さんにはそれほど強く求められませんでした。でも、血圧の測定を診療室で測ってそのデータだけで薬を出し、そこで診療が完結されてしまうと、この患者さんを次回診察するまで、患者さんの生活の状況はまったくわからないわけです。
やはり、医療側としてはその間のことも管理し把握しておきたいので、毎日血圧測定してそれを手帳に記載し提出してもらうようにしました。今回と次回の診療の間をきちんと管理する。今まででポイントとポイントだけで診ていたのが、ポイントとポイントを繋ぐことをしたわけです。それが平成の後半の動きでした。
さらにデジタル技術を進化させ、ライブでチェックすることができるようになれば、血圧だけでなく、食とか睡眠時間とかも、総合的に評価できる時代がくると考えています。
今後は医師が診療室で聴診器を当てて判断し薬を出すのではなく、それまでの二週間、一か月、三か月の生活のことがデータによってつぶさにわかりますから、医師がさまざまな角度から判断できます。その技術を在宅医療でも使えるようになれば、家で寝ている患者さんの細かな情報も集まってくるわけです。

photo by naokichi hasebe

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