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SPECIAL対談 島村大×高木優一
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健康寿命促進が医療費削減の鍵

高木優一:
医療・介護等の福祉の問題に戻りますが、国家予算のかなりの部分が医療をはじめとする社会福祉の費用になると思いますが、現実的にどのくらいの割合になるのですか。
島村大:
29年度の予算、97.5兆円のうち、約40兆円が医療・介護などの社会福祉費用となります。半分弱を占める大変な額です。高齢者社会へと進んで行くのですから仕方がないことなのですが、やはりこのまま予算が膨れあがり、結果、若い人々の負担がどんどん増していくという道筋にしてはいけません。やはり、健康寿命を延ばす、健康な方を増やしていくという意識のもとに手を打っていかなければならないと考えます。
高木優一:
先生のご専門の歯科の領域でも、食べられなくなると途端に元気がなくなって病気がちになり引きこもってしまう。整形外科の領域でも、足腰が痛く弱って歩けなくなると、活動が極端に減って家に籠もるしかなくなる。やはり健康寿命の大切さを実感しますね。
島村大:
フレイルという言葉を聞かれたことがありますか。年齢に伴って活力が低下した状態のことをそのように言うのですが、たとえば、高齢者の方が体力の衰えから転びやすくなり、さらには骨折しやすくなっています。すると、そこから寝たきりになってしまう。フレイルをどう防ごうかというのが、次の大きな問題として浮かび上がってきています。骨折から寝たきりになってしまう方が本当に多くなってきているのです。
高木優一:
認知症の問題も大きいと思います。私のテリトリーである不動産の現場でも、お婆ちゃんがとても長生きして老人ホーム代が払えない、自宅を売却しようにも認知症で意志能力がなくて決定権者になれないから、どうにかして成年後見人を見つけなければならないというような問題が起きています。成年後見のなり手を見つけるのも困難です。現在、700万人ぐらい認知症の方がいるといいますが、今後ますます大きな問題になっていきそうですね。
島村大:
間違いなく認知症の問題は深刻化するでしょう。もちろん、国もいろいろな策を講じようと動いてはいますが、いかんせん苦しい財源の中でやらなければなりません。NPOの方々の力を借りたり、地域包括ケアの機能を充実させたりといった方策に頼るしかありません。もう一つ、国の問題として考えなければならないのが、日米の貿易摩擦です。アメリカは日本に対する貿易赤字を何とか解消したいと考えているわけです。それには日本がアメリカから物を買えばいいという理屈になるのですが、日本にはお金がない。そこでアベノミクスを推し進めて内需を拡大していこうということになります。規制緩和などはもちろんやっていくのですが、財政出動も考えなければならない。昔の悪いイメージの公共事業ではなく、疲弊している公共インフラの整備などを行っていく。しかし、人がいない。ならば報酬を上げるなどしてとにかく人員を確保し、内需を拡大していく。その循環がやがてはアメリカの貿易赤字を減じさせるという理屈ですね。
高木優一:
なるほど。さまざまな課題が山積していますね。
先生の今後のご活躍に期待しています。本日はありがとうございました。

photo by naokichi hasebe

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