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SPECIAL対談 都野賢一×高木優一
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荘厳な儀式から家族参加型へ

高木優一:
納棺師の仕事は現場で覚えていくしかないということですね。一般の方は納棺師といってもどのような仕事をするのか、あまりピンと来ないかもしれません。湯灌という言葉一つ取っても知らない方が多いと思います。
都野賢一:
そうでしょうね。一般の人には「おくりびと」のイメージがぼんやりとあるだけだと思います。実際の納棺師の仕事は、お身体をみせていただき、ご遺体に見合ったお化粧をして旅支度を整え棺の中へご遺体を入れるという流れです。時間としてはだいたい1時間から1時間半ぐらいが目安ですね。
高木優一:
それを葬儀社が行う場合もありますよね。
都野賢一:
はい。ご予算がない場合などは葬儀社の方で簡素に行うのですが、どうしても納棺師の仕事に比べ丁寧さや密度が違いますから日持ちがしません。火葬日まで変色したり臭いが出てきたりしてしまうこともあります。
高木優一:
納棺師の目から見て、葬儀自体、昔と今と大きく変わってきた点はどこでしょうか。
都野賢一:
葬儀の規模は年を追うごとに小さくなってきている実感はあります。当然、それに比例して予算も縮小しますから、我々のような外部を使ったオプションをどんどん追加させていくというような戦略を取るようになってきています。納棺に限れば、昔はご家族一同横にきちんと並んで荘厳な儀式のように行っていましたが、今はもっとアットホームといいますか、ご家族を取り囲んで一緒に着替えをしたりお化粧をしたりということも行います。
高木優一:
家族参加型ですね。
都野賢一:
ご家族とコミュニケーションを密にしながら行うことで、家族の方が葬儀のことを覚えてくれるのです。ああ、おじいちゃんの葬儀の時はみんなで着替えさせたね、お化粧もさせたね、と。でも葬儀社主体の儀式的な葬儀だと何にも記憶に残らない。記憶に残れば、次におばあちゃんが亡くなっときも、おじいちゃんのときにお願いした納棺師さんにまた頼もうというご依頼をいただくことが期待できます。
高木優一:
なるほど。
都野賢一:
葬儀屋さんはご遺体を扱うプロではあるのですが、ご遺体に処置を施すプロではありません。たとえば、水死や変死などの腐敗が進んでいるようなご遺体は葬儀屋さんではもうどうしようもなく、我々に頼んでくるというケースは多いですね。私はあまり腐敗が進んでいるご遺体を扱うことはないのですが、そういったご遺体があった部屋の掃除は大変なので中には50万円ぐらいの請求をする業者さんもいます。

photo by naokichi hasebe

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